再ブーム到来とリターンライダーの問題点

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近年50歳代のライダーが沢山当校にご入校しています。
皆さんの話を聞くと「若い頃によく乗ってたんだ~」なんて声が聞こえてきます。
人気が最もあった昭和50年代に青春時代を過ごした世代でいわゆる「リターンライダーと言われている方たち」です。

そして今は第3次バイクブームらしいです。
第3次ブームの根拠としては
・バイクの売れ行きが右肩上がりで、特に街乗り需要がある排気量125~250ccのバイクの伸び率がすごい
・全体として燃費の向上と料金が下がった
・新車がどんどん出ている
・デジタルツールが装備され若者にうけた
などが考えられますが、町中で走っている沢山のバイクを見て1980年代に青春時代を過ごした中高年の人たちが熱い思いに駆り立てられた事は想像に難くないでしょう。
今はリターンライダー向けの専門雑誌や安全講習会など彼らにスポットを当てた多くの企画が存在し賑わっています。

ブームの歴史

バイクブームは過去にも日本の経済成長と共に訪れています。
1970年代には高度成長期で今までアメリカ主導だったバイクの生産が日本に移りより精密なメカニズムを搭載した日本製のバイクが現れ世界に輸出されるようになりました。HONDA DreamCB750、YAMAHA 650XS1、KAWASAKI 900Super4はその最も顕著たるバイクで、バイクと言えばハーレーといった概念を壊し日本をバイク大国へ押し上げた素晴らしい名車です。
80年代はかつてない空前のバイクブームが訪れました。
一部では「狂乱の80年代」と呼ばれメディアの普及と共にロードレースや鈴鹿の8時間耐久レースが若者の関心を高め、メーカーはレーサーレプリカを販売し高価なバイクが飛ぶように売れました。YH戦争といってヤマハとホンダが業界一位の座を狙い毎月新車を出し一気にバイクの性能も高まり、バイク販売数は2013年が約45万台に対しピーク時1982年は329万台なので、そのブームがいかに凄かったかは数字が物語っています。バブル経済や暴走族等の社会的要因や漫画で言えば「バリバリ伝説」が人気で一般人まで巻き込んだブームとなりました。ここまでいくとバイクは実用性よりも趣味の世界に入っていき、個人のライフスタイルに合せた乗り物として認識されるようになりました、
その後、バブルの崩壊による経済事情また原付バイクのヘルメットの装着義務化が推進され手軽さがなくなりブームが衰退していったようです。
ただし90年代にもHonda Steed400やYamha Majesty250などの名車は生産されていてストリート系は進化をとげ、20代の若者たちはファッション的な役割をもつバイクに魅了されました。
そして「第3次ブーム」です。これは某メーカーのお偉いさんが言った言葉ではっきりとした定義はありませんが、バイクの登録台数も2010年以降は微増にあり、250ccのスポーツバイクの販売ラッシュを見るとブームというよりは安定性が出て来たと考えた方がいいかもしれません。
そんなバイクのブームと終焉を体験したリターンライダーがこの3次ブームに乗り免許を取得している状況があります。

新たな問題点

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バイク業界や教習所業界にとっては非常に嬉しい事で、様々なキャンペーンや免許取得シニアプランなどあの手この手でオヤジライダーの獲得に力を入れています。
一方「中高年による事故の増加」「高速道路での事故」など新たな問題も発生しているようです。
これがリターンライダーによる事故の増加とは一概に言えませんが、80年代に乗り回していたバイクより現在はデザイン性が高いものが多く、加速性能やコーナリング性能など当時ではサーキットを走るレースバイクのようなものが市販されバイク選びには憧れだけが先行してしまう傾向にあります。また大型化に伴い重量や排気量が増加しますので体力が落ちている50歳台には乗りこなすことが難しいという事情が考えられます。
またバイク免許制度としては、以前は大型二輪を取得する上で「運転免許試験場」で技能試験(飛び入り試験)に合格する必要性があり必死に練習し技能を磨き、不合格になるたびに安全運転の基礎を体に叩き込みました。ナナハンと呼ばる排気量750ccの大型二輪を乗る事がステータスでありその免許保有者はプライドあり、結果として未熟なライダーを大型バイクから遠ざけるフィルター機能が作動してように感じられます。
体力やバイクの性能の変化に感覚が追いついていかず、単純なミスで命を落とすケースがありそこに携わる業界は改めて考えなくてはいけないと思います。
こうした中バイクの事故を防ごうと業界団体、メーカー等は安全講習会を開催し技能教習や道路交通法の遵守や危険運転等の注意を喚起しています。
特に「若かりし頃とのギャップ」を認識する事が重要で、中高年のバイク事故は主にカーブや転倒、壁への衝突など単純操作ミスによる単独事故が4割占めておりバイクの性能がアップしているにもかかわらず、アクセルを回しすぎたりそのバイクに合せた体重移動ができずバランス崩して事故になると分析されています。

身体を鍛える事が事故防止の第一歩

そう考えると事故を防ぐには「筋力トレーニング、メンタルトレーニングを行う」事も極めて重要だと思います。
体の体幹を鍛えたり、動体視力の検査、また眼鏡やコンタクト付けている方は改めて度数のチェックが必要になってきます。
それ以上に必要な事がメンタルトレーニングです。
最初は誰しも操作に臆病で走りが大胆に成る事はありませんが、これが慣れてくると昔の熱い血が騒ぎ、無茶な運転をする場合があります。
反射神経は確実に衰えていますので、頭で思っていても体が付いて行きません。ヘルメットをかぶったら「免許を取ったら生涯無事故」と心の中でつぶやき、強い心で
スピードを自制して下さい。事故を防ぐには物理的と心理的なアプローチがとても重要です。

大型バイクで人身事故を起こした場合、相手側は死亡する場合があります。
せっかく運転免許証を取得してもあこがれだけでは乗れないのが現在のバイクですので、身丈にあったバイクを購入して楽しいバイクライフを過ごしていただきたいと思います。