バイクを安全に運転するためには、運転技術だけではなく走行中のバイクの特性を事前に知っておく必要があります。
バイクはバランスを取って走行するため運転者の体力や力の負担が大きく、路面の凹凸や落ち葉などちょっとした道路状況の変化や、また後方からの大型車が通過する時の風圧などで転倒する場合があります。
走行中の視界の変化やバイク自体にかかる自然の力などを理解し安全運転の知識を深めましょう。
1.視界の特性
視力は高速になるほど低下し、近くの物体が見えにくくなります。また降水時などは晴天時に比べ極端に視野が狭くなり運転操作が難しくなります。
ヘルメットは半キャップのものが視野が一番広いですが、これは危険と言わざるをえません。
スピードが早くなると風圧で視野が狭くなりますが、半キャップは倒れた場合に保護効果が薄いため死亡事故につながるケースがあるからです。

またトンネル等における明るさの変化にも注意が必要です。
急激に明るさが変わると順応するために視力は一時的に低下しますので、より慎重な運転が必要になってきます。
トンネルを抜けた時「まぶしい!」と感じて前方に走っている車が突然消えたと思ったことはありませんか?
これは明るい色の車と外の明るさが重なり車の形が認識できなくなるためです。
一方トンネルへ入る時、前方に走っていたトラック等が見えにくくなることがありますが、これは「溶け込み」という現象になります。視界や視力は個人差があるので見え方は多様ですが、事前にこういった現象があることを認識しておけば慌てる事がなくなり事故を未然に防ぐことが可能です。
左:トンネルを出るとき-暗い所から明るいところへ抜ける場合
右:トンネルへ進入するとき-明るい所から暗いところへ入る場合
2.バイク走行中に働く自然の力
走行中のバイクにはその重力や速度により、慣性力、遠心力、摩擦力、衝撃力がかかります。
慣性力
中学生で習ったでしょうか?いわゆるイングランドの哲学者・数学者であるニュートンの「慣性の法則」というものです。
動いている物体はそのままのスピードで動き続ける性質がありそのままの速度を維持しようとする力があります。
また重い物体がバイクに乗っている場合は加速する上では不利ですが、速さが一定で変化しにくいという性質があります。
体重が軽い人と重い人が同じバイクで同じ速度で走行した場合、どちらが早く停まるかといえば、体重が軽い人になります。
これは体重が重い人が乗っているバイクの速さが変化しにくいという性質が働くからです。

また走行中は空気抵抗や路面の摩擦抵抗の影響を受け、ブレーキをかけた場合バイクはタイヤと路面の摩擦抵抗により停まります。
濡れた路面は通常と比べ摩擦抵抗が少ないので制動距離が長くなることを覚えておいて下さい。
遠心力
カーブや曲がり角では遠心力(外側に引っ張られる力)が働きます。スピードの出し過ぎで体がバイクの動きについていけず、投げ出され大事故につながる場合がありますのでその特性を知っておきましょう。
◯速度の2乗に比例して大きくなります。例えば速度が2倍なら遠心力は4倍になります。
◯カーブの半径が小さいほど遠心力は大きくなります。
ライディングテクニックとしては遠心力が強く働くほど深くバンクし(内側に倒す)走行する必要があります
またカーブに差し掛かる手前の直線部分で十分に減速してカーブに進入します。カーブでブレーキをかかるとバランスを崩しやすく危険です。
(教習では減点対象です)
衝撃力
速度や重量に応じて大きくなります。
時速60kmで壁にぶつかると、約14mの高さから落ちたのと同じくらいの衝撃があると言われています。